14平米にスーベニアには夢と現実が詰め込まれている~試聴から14平米とスーベニアの謎に迫る~

本記事を読む前に下記記事を読むとより理解が深まるかもしれません(ニコニコのブロマガがサ終するとかしないとか見た気がするのでいずれこちらのブログに移植するかもしれません)

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 はじめまして(当時上記記事を読んでくださった方はお久しぶりです)。アイドルマスターシンデレラガールズにおいて早坂美玲、久川凪、久川颯の担当Pをしています、kotonariと申します。昨年の早坂美玲に続きまして、今年のシンデレラマスターで久川凪がソロ曲を頂き、担当が二年連続シンデレラマスターに参加することとなりました。そんな久川凪のソロ曲「14平米にスーベニア」の試聴が公開され、とても良い曲だったのでいてもたってもいられず記事にしたためました。

 まず14平米にスーベニアってなんやねんという話。担当の私もなんやねんってなりました。14平米は部屋の面積を表しており、14㎡、4m×3.5m、ワンルームくらいの広さですね。次にスーベニア。直訳すればお土産とか贈り物ですね。じゃあプレゼントとかギフトとどう違うのかというと、お土産の中でも特に自分に向けた、思い出を残しておくためのものを指したり、あるいは贈り物としてもやはり貰う側の記憶に残してもらうことを意図したものを指すらしいです。なるほど。じゃあなぜこの2つの単語が「に」でつながっているのか。まだこれだけではわかりにくいですね。普通は部屋に贈り物はしませんからね。これはもう実際に歌を聴いて考察していくしかありません。

 

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 というわけでここからはぜひ試聴を裏でリピート再生しながらお読みください。さてこの曲、大筋としては初めて上京した女の子がワンルームを借りて一人暮らしを始める様子をポップにラップ調で表した曲です。音楽はあまりくわしくないので音楽に関する考察解説は諦めます。上京した女の子はワンルームを借り、初めての一人暮らし、初めての自分だけの部屋。さあ部屋に自分の好きなものを置くぞと意気揚々と初めての一人でのお買い物に行きます。おそらくこの女の子は家族と中がよく、ずっと何をするにも家族と一緒だったのでしょう。そんな初めてのお買い物、欲しい物を何でも買う…とはいきません。なぜならお小遣い制だから。親にねだれば買ってもらえた環境とは違います。中々思うように部屋を飾れない女の子。どうするか。カメラを片手に散策に行きます。お散歩カメラの波動を感じますね。季節外れの桜が咲く中、猫と遭遇。ライティングを確認し、しっかり被写体にも了承を取ります。猫に了承とる女の子。かわいすぎますね。そんな猫ちゃんのあくびの瞬間をパシャリ。こうして街角で撮ったスナップ達をお土産として部屋に持ち帰り、飾ってあげるわけです。本当は色んなものを買って帰って飾るはずが、結局いくつか写真を飾るのが精一杯。写真がお土産であることやまだまだ余白だらけの部屋につい笑ってしまうわけですが、まだ余白だらけであるからこそ夢も、そして現実もこれから詰め込めるんだ、と一番は終わります。

 なんならもうこの時点でなんとなく泣いてしまいそうですが続けます。ここでタイトルを振り返ってみるわけですが、14平米とは女の子が借りたワンルーム、スーベニアとは持ち帰った写真達。これから一緒に生活する相棒とも言えるワンルームに、お土産として写真を飾るから「14平米にスーベニア」というわけですね。新生活だからキラキラしてるだけでなく、一人暮らしになって変わった生活や、一人暮らしを始めたてで余裕がない様子、そんな中でも工夫して自分らしく生きていく様が、明るく可愛らしい中にもどこか切ない曲調で表現した名曲だと思います。

 では、この曲を凪が歌うことにどんな意味があるのか。O-Ku-Ri-Mo-No Sunday!という曲でデビューした凪が「贈り物」の意味を持つ「スーベニア」がキーになる曲をソロ曲として歌うのはそれだけでエモなのですが、そんな単純な話ではないでしょう。また、歌詞中の女の子はあくまでも凪自身ではない…と思います。まだ中学生の凪自身が賃貸契約をするとは思えませんし(もちろんオーバーラップする部分は多々ありますが)。そういう意味で、これまでをタイトルや歌詞そのものから直接的に得られる「表向きの意味」とするならば、この曲を凪が歌うことで生まれる意味やそれを通じて我々に伝えたいこと、表現したいことは「裏向きの意味」とでも言えるでしょうか。

 凪には双子の妹の颯がいます。デレステ内での描写、特にO-Ku-Ri-Mo-No Sunday!コミュから、二人はとても仲がよく、いつでも一緒であったことが伺えます。冒頭の記事でも述べているのですが、実は筆者自身双子であり、双子についてはかなりの解像度で理解しているつもりです。双子は基本的には仲がよく、特に子供の頃ほどずっと一緒にいることがほとんどです。またなんでも二人で分け合うことが多く、例えば部屋も二人で一つだったりするわけです。これは凪颯姉妹も同様のようです。そんな久川姉妹は颯のアイドルへの挑戦をきっかけに上京し、最初はアイドルになるつもりはなかった凪はスカウトで、颯は(おそらく)凪と一緒にデビューすることを前提としたオーディション採用という形でアイドルになるわけです。ここで凪は最初アイドルになるつもりはなかったというのが重要で、颯と別の道を歩きたがっていた。結局一緒にアイドルになったわけですが、アイドルとして東京で生活していくために凪は寮での一人暮らしを決意します(O-Ku-Ri-Mo-No Sunday!コミュ)。やはり、凪は今まで一緒だった颯から独り立ちしたい、という気持ちが強かったのでしょう。結局、寮で凪颯それぞれ別の部屋で一人暮らしを始めるわけです(O-Ku-Ri-Mo-No Sunday!コミュ、恒常SSR[オフタイム・ナギルーム]久川凪参照)。

 家族、特に双子の妹から離れて一人暮らしをしたがった凪が、一人暮らしを始める女の子の歌を歌う。なんとなくつながってきたのではないでしょうか。つまり「14平米にスーベニア」は、凪自身が曲中の女の子に自身を投影できるように作られている曲と言えるでしょう。一人暮らしを始めて、自分だけの部屋で暮らし始め、思い出を飾り始めた1番の歌詞は、ちょうど今の所デレステ内で描かれている久川凪のアイドル生活そのものだと思います。このことから、まだ試聴では聴けない2番以降は、これからの凪のアイドル生活が投影できるような内容になっているのではないか、と考えています。早くフルで聴きたいですね。

 ここからは少し妄想に片足突っ込むような考察をしていこうと思います。オタクが好きそうなやつ。「14平米にスーベニア」のキーアイテムであるところの「14平米」と「スーベニア」は、凪にとっては何になるのでしょうか。

 まず比較的わかりやすい「スーベニア」。これはド直球そのまま「アイドルとしての経験や思い出」でしょう。曲中では写真というアイテムだったわけですが、まだまだ余白だらけで夢と現実が詰め込める状態でした。つまり、(メタ的には実装から2年以上経ったけど)まだまだアイドルになりたての凪は、例えば自分の歌を多くのファンに聴いてもらうとか、大きい会場で多くのファンの前でライブをするとか、そういった「夢」も、まだまだレッスンを頑張らないといけないとか、ちょっと失敗しちゃうとか、そういった「現実」も詰め込めるわけです。エモですね。

 少しむずかしいのが「14平米」。そのまま受け取るなら寮の自室になりますね。これも間違いではないと思います。ナギナイズしはじめた寮の部屋に、アイドルとしての思い出が詰まったグッズや写真等々を並べて、よりナギナイズしていく。まさに「14平米にスーベニア」です。でもここでもう少し踏み込んでみたいんです。まあほぼ妄想かもしれないですけど。前述したように、曲中の女の子にとってはこれから生活するワンルームは相棒のようなもので、だからこそその部屋を飾り付けることを「スーベニア」と表現したわけですね。相棒。凪にとっての相棒とは?少し前までなら間違いなく双子の妹の颯でした。でも女の子はもう家族から離れて一人暮らしを始めたのです。凪が家族から離れてからの相棒。そう、プロデューサーです。アイドルとしての生活を始めて、「アイドルとしての経験や思い出」というスーベニアを共有し詰め込む相手はプロデューサーなのではないでしょうか。これは、サビの真ん中くらいで「お土産に写真飾ろう、笑ってしまうな、笑っちゃうだろうな」という歌詞のあとに右から「はいっ」と聞こえてくる(イヤホンで聴くとほんとに真横から聞こえてくる)のも、やはり、「14平米」がプロデューサーであることを意味しているのではないでしょうか。というわけで、凪が「14平米にスーベニア」を歌うことで、この曲は「これからプロデューサーと一緒にアイドルとしてやっていきながら思い出を積み重ねていこう」という歌になるわけです。エモエモのエモですね。更にいうとその思い出を「愛すべき夢と現実」、「愛すべき」と歌っているわけですね。泣きそう。泣いた。今まであまりアイドルをやる理由やモチベーションが描かれてこなかった凪ですが、シンデレラマスターという「そのアイドルのための曲」でついにそこに触れられるわけです。とてもフルが楽しみですし、デレステに実装されるときにコミュもとても気になります。待ち遠しいです。

 ちょっと話は変わりますが、部屋に暮らす住人からすれば、部屋とは自分を守ってくれるものです。そのワンルームにプロデューサーを重ねてみているのであれば、凪はプロデューサーに対して並々ならぬ信頼を寄せているのではないでしょうか。あるいは、信頼を通り越して依存している、というところまで行くかもしれません。なにせ寝泊まりする部屋無しに生活するのは困難を極めます。この依存の話は冒頭の記事でも少し触れていて、双子というのは生まれてからずっと一緒に生活しているが故に、そばにいるのが当たり前であり、相手を世話するのも、相手に世話されるのも当たり前になっています。これは体感的にもそうだなと思いますし、O-Ku-Ri-Mo-No Sunday!コミュでも細かく描写されていて、comic cosmicコミュでも颯視点で描かれています。そんな双子の兄弟から離れるということは、それなりに不安なことです。ましてやまだ中学生。その不安や寂しさを埋めてくれる相手として、凪がプロデューサーに依存していく可能性もあるのかな、と思います。

 ここまで、「14平米にスーベニア」の表裏の意味を考察してきました。「14平米にスーベニア」は、試聴の範囲でこれだけ考察が膨らむ、夢と現実が詰まった素晴らしい曲だなと強く感じています。曲そのものも何度繰り返し聴いても飽きないどころか聴き重ねるたびに良さがわかるスルメ曲という印象ですし、こんな素晴らしい曲を凪に与えてくれた八城雄太さん、emon(Tes.)さん、そしてシンデレラガールズ運営様には感謝しかありません。またもちろんこの曲は久川凪役立花日菜さんが演じ、歌ってくださっているからこそ何倍にも魅力的になっていると思います。ありがとうございます。ここまで読んでくださった皆さんも、もしよろしければフル発売時には購入し聴いていただけたら幸いですし、この曲をきっかけに凪を担当しプロデュースを始めてくださったらとても嬉しいです。